トラック業界の課題と業務用トラックシミュレーター開発の背景
新人ドライバー教育における現状の問題
近年、物流業界ではドライバー不足が深刻化しています。

さらに、トラック運転は普通車と比べて車体が大きく、死角も多いため、未経験者が実車で練習するには大きなリスクが伴います。
なぜシミュレーターが必要なのか
添乗指導よりも直接的に指導できること、複数人で研修する場合、新人同士で運転操作の注意点や問題点を確認し合えること、そして最大のメリットは上空からの俯瞰視点で確認しながら操作できることです。
これにより、車両事故の大部分を占める内輪差による巻き込み事故、外輪差によるオーバーハングの事故の防止に役立ちます。
この俯瞰からのイメージがある人と無い人では上達のスピードや操作の正確性に大きな差が出ると考えています。
業務用トラックシミュレーター開発のきっかけ
ヒントはプロレーサーが練習に活用するレーシングシミュレーターの存在
私自身、本業で大型トラックで長距離を走っている傍ら、JAF公認レースであるロードスターパーティレースにシリーズ参戦しております。


そんな中、限られた練習時間と費用の中で最大限の結果を残す為、シミュレーターを活用して練習をしておりました。
最初は、シミュレーターショップであるVERSUS店舗で練習していましたが、そのうち自分でもシミュレーターを作ってみたくなり、実車のAE86のボディを加工してシミュレーターを製作しました。
そうしていく中で、レースで培った経験と、シミュレーターを製作した経験、大型トラックの運転手として、業界全くの未経験で入社し、今年で4年目を迎えておりますが、無事故無違反を継続できている経験、これらを総動員すれば、物流業界の人材不足や事故率の低減に貢献できるシミュレーターが作れるのではないかと考え、レーシングシミュレーターメーカーであるVERSUS様と協力し、開発しました。

リアルな操作感を実現するまでの試行錯誤
先述のAE86シミュレーターはシミュレーションできる車種を1車種に絞ることによって、圧倒的な没入感を再現することが出来、他には無い乗車体験を再現することに成功しました。
その経験を活かし、大型トラックのシミュレーションに最適なデバイスの選定、ドライビングポジション、画角の設定、サスペンション、キャブサス、エアーシートの揺れを再現するモーションセッティング、そしてデジタコに内蔵されているGセンサーを走行中に可視化するなど、徹底的に現場目線での機能に拘りました。

特にGセンサーを可視化することによって、ブレーキの踏み方、アクセルの入れ方、ハンドルの切り方まで数字で見ることができるので、トラックや荷物に優しい運転を徹底することができます。

これは長い目で見れば、トラックの故障率の低下や荷物事故の低減にも役立つ機能です。
業務用トラックシミュレーターの特徴と機能紹介
実車さながらの操作性
ステアリングの特性、シートポジション、モーションセッティングに至るまで、大型トラックで毎月1万キロ以上走行している現役ドライバーが乗って違和感無くなるまでセッティングを煮詰めました。



これはどのシミュレーターにも言えることですが、物体が動かずその場にある以上、実車での体感のGや、景色の見え方など微妙なズレは必ず発生します。
プロのレーシングドライバーでもそうですが、その違いを理解した上でシミュレーターにしかできない事を補完しながら現実のクルマと交互に乗ることによってリアルとバーチャルの垣根を無くして練習に活用しています。
シミュレーター本体の完成度も限界まで高めておりますが、必ずリアルとバーチャルの差は存在します。その差を埋めてフラットにするのが、現役大型トラックドライバーの経験と、実車のレースにシミュレーターでの練習を活かして走っている両方の経験がある私の仕事だと思っています。
危険な運転シチュエーションも安全に再現
使用ソフトはEURO TRUCK SIMULATOR 2
使用MODはPROJECT JAPAN「使用許諾済」

実際の国道や県道、高速道路に至るまで再現されたコースを走ることができ、一般車両の走行表現もあります。高度なAIシステムにより、敢えて危険な走行をするAI車両を出現させることもできるので、危険予知トレーニングにも役立ちます。
現役ドライバー目線で役立つ場面をデータとして収録

リアルで広大なマップを走れるPROJECT JAPAN MODを使用させていただいておりますが、その広いマップの中でも特に事故率が高い場面や実際の現場で要注意なポイントを厳選して収録しております。

事故率の高い場面で反復練習をしておくことで、いざ実車でその場面に遭遇した時に落ち着いて対応できるスキルを身につけていただけます。
導入メリットと活用シーン
新人教育にかかるコスト削減
未経験の方など特に、研修期間中の事故率が高い傾向にある為、最初にシミュレーターでイメージトレーニングを行ったり、指導員1人に対し、複数人で実技指導する事も可能なので様々な運用方法に対応できます。
運転技術の効率的な習得
10トン4軸低床車のラインナップの他にトレーラーの車両も多数収録されておりますので、実車を使う事無く、効率的にイメージトレーニングができます。
具体的には俯瞰視点や、降車確認視点などがあり、実際の運転席視点の状態から切り替えをする事によって、車両がどのような軌跡で進んでいるのかの確認がしやすくなっています。



また、弊社オリジナルのスイッチとして、視点変更レバー/ボタンを採用しており、直感的に視点変更、確認ができるようになっております。

導入事例とユーザーの声
運送会社での活用事例
新人研修だけでなく、地域の学校の職場体験等にも活用していただいており、免許を持っていない学生や、普段普通車しか乗らない方へ、トラックの動きを知っていただくきっかけ作りにも役立っています。
まとめと今後の展望
物流業界への貢献
①業務用トラックシミュレーターを通じて、事故率の低下はもちろん、トラックや環境、荷物に優しい運転を心掛けていただき、安全意識の向上に役立てていきたいと考えております。
②業務用トラックシミュレーターをきっかけに物流業界に興味を持っていただいたり、挑戦してみたいけどあと一歩踏み出せない方の後押しにしていくことで、新たな人材獲得に繋げていきたいと考えております。
③最後に、業務用トラックシミュレーターを通じて職場体験などの地域貢献、物流業界のイメージアップ、大型車両への理解を深めていただくツールとしての活躍を期待しています。
今後予定しているアップデート
今後は、専用のトレーニングコースMODの開発、2t車、4t車、10t車の車両データの開発、雪道や滑りやすい路面での走行練習、専用デバイスの開発等々、物流業界のニーズに合わせたアップデートを随時進めていきます。
こうしたアップデートを行うのは、現役トラックドライバーかつ、シミュレーターの開発にも携わっている私が現場目線で進めていくことが最適だと考えています。
この業務用トラックシミュレーターのテーマの1つに「進化するシミュレーター」というものがあります。
【完成品を納品して終わり】では無く、環境の変化、デバイスの進化に合わせて運用方法を考えたり、データを追加したりしながら、お客様のニーズに沿った製品を作り、目に見える結果に繋げていくシミュレーターにしていくことを目標とさせていただいております。
導入費用・納期・製品サイズ

導入費用
VERSUS製トラックシミュレーター
本体価格 税込550万円+輸送費、設置組立費、保守サポートプラン等別途見積
納期
ご入金後、約2〜3ヶ月
製品サイズ
縦4m×横4m